Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
六
松の細かい葉を通って、火縄の火がチラ――とこぼれた。武蔵の肱が大きな円を描いたのはその咄嗟であった。手のうちに握られていた石は唸りをあげて、線香ほどに見える火縄の光へぴゅっと飛んで行った。
――みりっと樹の小枝の裂ける響きと、あッと其処でいった叫びとが一つになって、霧の上から地面へ一個の物体を勢いよく抛り出した。勿論それは人間である。
六
「――オおっ」
「武蔵っ」
「武蔵だっ」
後ろに眼を持たない人間である限り、この驚きは当然に見えた。
三道それぞれな所に、水も漏らさぬ前衛の備えを固めていただけに、なんの予報もなく、この中核部で、いきなり武蔵の姿を迎えようなどとは、夢想だにもしていなかった吉岡方の狼狽も無理ではない。
わずか十名に足らないそこの人数ではあったが、不意に大地を震り上げられたかの如く、味方同士、腰の鞘と鞘をぶつけ合い、また、持ち直す槍の柄に味方の者の足もとを躓かせ、また或る者は不必要なほど遠くへ横ッ跳びに身を交わし、そしてまだ驚き足らないように、
「こ、小橋っ」
「御池っ」
と朋友の名を、無用な高声で呼び合ったり、
「抜かるなっ!」
と自分の心胆さえ定まらないのに他を誡めたり、