Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
小次郎殿、この印籠は、どうしておてまえの持ち物になったのでございますか」
切り口上で六部は問いつめるのだった。年頃二十六、七の男で年齢からいっても、ただ寺院を廻って碌々と後生を願っているような、生気に乏しい人物ではない。
「……誰だ、おぬしは一体」
やや真顔に返って、又八がこう相手を探ると、
「誰でもいいではないか。それよりも、印籠の出所を仰っしゃい」
「元からおれの持ち物なのだ、出所もあるものか」
「嘘をいうな!」
急に、六部は、語気をかえて、
「ほんとのことをおいいなさい。場合によっては、飛んだ間違いごとになりますぞ」
「これ以上、ほんとはない」
「じゃあどうしても、おてまえは泥を吐かないな」
「泥とは何事だ」
勢い、又八も虚勢を張ると、
「この偽小次郎めっ」
六部の携えていた四尺二、三寸の樫の丸杖が、言葉より迅くびゅっと風を鳴らしていた。腰を退く本能はうごいたが、体そのものにまだ酒の痺れが残っていた。
「あっ――」
二、三間も蹌めいたあげく、腰をついたが、起ち上がるが早いか、後ろを見せて駈け出した。その迅さはちょっと六部を狼狽させた。
泥酔している相手なので、そう機敏な行動はできまいと軽蔑っていた反動だった。