Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
人心地に返ってみると、気味のわるさが、また甦ってくる。
金の入っている紫革の巾着と中条流の目録と、そして先刻の印籠と、こう三つの品は、去年の夏伏見城の工事場で、大勢のために虐殺された頤のない武者修行の死骸から抜き取って来たものだった。そのうち、金はきれいに費ってしまい、懐中に残っていたのは、中条流の印可目録と、あの印籠が一つ。
「六部のやつ、あの印籠は、おれの主人の持物だといっていたが、――するとあいつは、死んだ武者修行の奉公人だろうか」
世間の狭さに、又八は始終追いつめられている気持だった。肩身がひけて、日蔭を歩けば歩くほど、いろいろな偶然が、鬼の影みたいに、追ってくる。
「杖か棒か、なにしろすごい物を打つけやがった。あの唸って飛ぶ棒の先でこーんと一つ頭でもやられたらそれ限りだ。――なにしろ油断はできねえぞ」
死人の金を費ってしまったということが、絶えず又八の良心の中にあった。悪いことをしたと思うたびに、あの炎天の下で虐殺された頤のない武者修行の死顔が眼にちらついて来てならない。
――働いて儲けたらきっとなにより先に返す。出世したら石碑の一つも建てて供養もするから、と彼は心のうちで、絶えず死者に詫びていた。