Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
五
信長は、ややその弊に気づき、大内裡を造営して見せたり、秀吉も後陽成天皇の行幸を仰いだり、一般を賑わし楽しませる庶民の福祉政策を取ったりもしたが、家康の政策が本意とする所は、飽くまで徳川家中心で、ふたたび庶民の幸福も皇室も犠牲にして、幕府ばかり肥え太ってゆく専横時代がやって来るのではなかろうかと、世の趨く先が案じられる――。
「それを案じている者は、天下の諸侯中でも、わが主君伊達政宗公より他にはござらぬ。――そして公卿では烏丸光広卿などで」
と、石母田外記は、いうのであった。
五
自慢というものは元より聞きづらいものだが、主人の自慢だけは聞いていても悪い気はしない。
わけてこの石母田外記は、主人自慢であるらしかった。今の諸侯の中で、心から国を憂い、また皇室へも、心から直な心をよせている者は、政宗を措いて誰もいない――というのである。
「……ははあ」
武蔵はただそう頷く。
彼には、正直なところ、そう頷くだけの知識しかなかった。関ヶ原の以後、天下の分布図は一変したが、
(世の中がだいぶ変ったな)
と思うだけで、秀頼方の大坂系大名がどう動こうとしているか、徳川系の諸侯が何を目企みつつあるか、島津や伊達などの惑星が、その中にどう厳存しているか――などという大きな時勢への眼は、改めて向けてみたこともないし、それらの常識は