Classiques japonais avec furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lisez 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 188 242 caractères · 380 écrans
三
色と音との合奏が、いまや裾野を占めようとしていた。
空の大半が紅潮を呈し、その紅の極まった頃、一筋の金箭が王岳の峰から、空へ燦然と射出された。つづいて無数の黄金の箭が、空を縦横に馳せ違った。
仮面の城主の纐纈の袍は、その光を全然収めた。平凡な紅色の衣裳となった。
三
一本の樫の木が立っていた。
それは非常に高かった。その梢の一本の枝へ、陽の光が、射したと思った時、王岳の頂きへ今日の太陽が、はじめて額を現わした。
裾野は露に濡れていた。
その露が一時に輝いた。
しかし裾野は次の瞬間には、靄に鎖ざされて見えなくなった。
仮面の城主はその靄の中を、下へ下へと下って行った。
古関、飯田、梯、新屋、点々と小さな部落があった。彼は部落を故意と避け、先へ先へと進んで行った。
次第に靄が上って来た。
彼の足は疲労れて来た。
人に見られるのも厭であった。
やがて滝戸山の斜面へ来た。
巨大な一座の枝垂桜が、根もとまでベッタリ花をつけていた。
その蔭で彼は眠ることにした。
鉛色の少将の能面を、桜の花越しに空へ向け、後脳へ枯草を積み重ね、両足を延ばし、両手を重ね、地の上へ仰向けに寝た。