Classiques japonais avec furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lisez 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 188 242 caractères · 380 écrans
第二十回
一
そういう立派な人物ではなく、穢いみすぼらしい乞食であった。いつも低く俯向いているので、その容貌は解らない。そうしてどこからやって来たものか、それも誰にも解らなかった。嗄れた声、悩み抜いた態度、慇懃の調子で云うのであった。
「私にさわらせてくださいまし。かえってご恩でございます」
で、病所へさわるのであった。すると不思議にも悪病は、次第次第に快癒した。
「聖者様が参られた」
「地獄の苦しみもなくなるだろう?」
「だがどう云うお方だろう?」
「立科の方から来たそうだ」
「いや裾野から来たそうだ」
「それにしてもどうしてあのお方は、俯向いてばかりおられるのだろう?」
「なんて悲しそうなご様子だ」
「それにちっともお威張りにならない」
「みんなの罪を背負ってるようだ」
「ただ指の先を触れられるだけだ」
「それだけで病気が癒ってしまう」
町から町、人から人、聖者の噂は伝わった。
聖者の後へは数百人の者が、いつもゾロゾロ従き廻わった。癒された者は感謝のために、病気の者は癒されたいために。
偶像にされるのが厭だからであろう、よく聖者はこう云った。
「病気の癒ったお方には、私は用はございません。