Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
「そうはゆかないのだ。お通さんも若い女子、武蔵も若い男。しかも、おまえにいうのも恥ずかしいが、会えばわしはお通さんの涙に負けてしまう。きっと、お通さんの涙に今の堅い決心を崩されてしまう……」
柳生の庄で、お通の姿を見ながら逃げて去ったあの時の回避と――今夜の彼の気持とでは、同じ形にあらわれても、武蔵の心の内面には、大きな相違を自覚していた。
花田橋の時でも、柳生谷の時でも――以前はただ、青雲にあこがれる壮気と覇気――また潔癖に似た驀しぐらな道心が、火が水を弾くように、女性の情を反撥したに過ぎなかったが、今の武蔵には、元来の野性が、徐々と智育されてくるにつれて、そこから一面の弱さも当然に覚えて来つつあった。
またと生れ得ない世に生れてきた生命の尊さを知っただけでも、それだけ恐さを知って来たのである。剣に生きる人間以外に、種々に生きる道を辿っている人生の視野を知っただけでも、それだけ、独りよがりの自負心を削がれているのである。「女」というものについても武蔵は、その魅力を、吉野に見ているし、自分という実体の中からも多分に「女」に持つ人間のあらゆる惑情を知りかけている――で今の武蔵は、その対象を恐れるよりも、自分の心を恐れるのだった。