Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans

Aozora Bunko

およそ、対象は、外にあって、形もあるが、この敵は、自己の中にあって、形がない。

武蔵は、狼狽したのだ。明らかに彼は、自分の心にあった大きな陥没を知って、うろたえたのである。

そして、なくても困る、あっても苦しむ、すべての人間が等しく持っている血を――殊に異常な情熱にそれを昂め得る血を――どう処理したらいいのか。まったく、武蔵自身でも、分らなくなって、物狂わしく、滝つぼの中に、身を投じたのに相違ない。――城太郎が刹那に見た眼も、お通へ向って、お師匠様が身を投げたと呶鳴った言葉も、そう誤りではなかったに違いない。

「――お師匠様アっ……お師匠様アっ」

と、その城太郎は、泣き声を出して、なおまだ叫びつづけていた。

彼の眼には、武蔵の生きんとする姿が、どうしても死なんとする姿にしか映らないのであろう。

「死ンじゃ嫌だっ、お師匠様っ、死なないで下さいっ」

自分もともに滝の痛みを怺えているように、両手の指を固く組み合せ、滝の轟きと泣き声とを争っていたが、ふと向う側の絶壁を眺めると、その途中につかまってともに悲しんでいたお通が、いつの間にかどこにもその姿が見えなくなっていた。