Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
けれど、丸い四尺の杖は、その全部が刃であり、切先であり、また、柄であるともいい得る。従って、これを上手に使われると、杖の千変万化なことは、到底、剣の比ではない。
剣の六感で、
(こう来るな)
というような測定をもったらとんだ目にあう。杖は、時によって、刀のような性格を持って、短槍と同じ働きもするからである。
十文字になった杖と刀の上から、武蔵が刀を引けない理由は、その予測がゆるされないからであった。
権之助の方はなおさらである。彼の杖は、武蔵の刀を、頭上に支えているのであるから、受身の体であった。――引くはおろか、もし、満身の気魄を、びくとでも弛めたらば、
(得たり)
と、武蔵の刀は、そのまま一押しで、彼の頭を砕いてしまうであろう。
御岳の夢想をうけて、杖の自由を体得したという権之助も、今はどうすることも出来なかった。
見ているまに、彼の顔は蒼白になって行った。下唇へ前歯がめりこんでいる。吊るしあがった眼じりから脂汗がねっとりと流れ出す。
「…………」
頭上に受けとめている杖と刀の十字が波を打ってくる。その下に、権之助の息が刻々に荒くなっていた。
――すると。