Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
すると先刻の――秩父の熊とか鷹とかいう男が、
「まあ、待て。ひとりや二人の乾飯ざむらい、騒ぐにゃ当らねえ。おれが懸合いに行って、謝り証文を取って来るか、馬の小便で顔を洗わせるか、かたをつけてやるから汝たちは静かに呑みながら見物していろやい」
「おもしれえ」
と、博労たちは、襖の陰に鳴りをしずめた。
その者たちから見ると、頼みがいある面だましいを持った博労の熊五郎は、腹帯を締め直して、
「へい、御免なすって」
と、間の襖をあけ、上眼づかいに、相手を見ながら、膝で這いずりこんだ。
武蔵と、伊織のあいだに、誂えておいた蕎麦がもう来ていた。大きな塗の蕎麦箱の中に、蕎麦の玉が六ツ並んでいて、その一山を、箸で解しかけていた所である。
「……あ、来たよ先生」
伊織はびっくりして、そこを退いた。熊五郎は、その後へ、大あぐらを掻いて坐りこみ、両手の肱を膝へついて、獰猛な面がまえを頬杖に乗せながら、
「おい牢人。喰うなあ後にしちゃあどうだ。胸につかえているくせに、何も落着きぶって、無理に喰うにゃあ当らねえだろうに」
――聞えているのかいないのか、武蔵は笑いながら、次の箸にまた蕎麦をほぐして、美味そうに啜りこんだ。