Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
そのうちに、女の力が勝ったものか、男がわざと曳かれて行くのか、男女は橋の下へ、一緒に降りて行った。
「……?」
伊織は、不審を覚えて、こんどは橋の欄干から、下の河原をのぞいた。浅い河原には雑草が萌えていた。
ふと、上を見廻すと、女は、伊織が覗きこんでいるので、
「ばかッ」と、怒った。そして、打ちかねない顔つきをして、河原の石を拾いながら、
「ませてる餓鬼だね」
と、投げつけた。
伊織は、胆をつぶして、橋の彼方へ、どんどん逃げだした。曠野の一ツ家に育った彼だが、今の女の白い顔ほど、恐いものを見たことはなかった。
三
河を背なかにして、倉がある、塀がある。また、倉がつづく、塀がつづく。
「あ、ここだ」
伊織は、独り言に、思わずそういった。
浜倉の白壁に、二階笠の紋が、夜目にもはっきり見えたからだ。柳生様は二階笠ということは、流行歌でよく唄うので、はっと思い出したのであろう。
倉のわきにある黒い門が、柳生家にちがいない。伊織は、そこに立って、閉まっている門をどんどん叩いた。
「何者だっ」
叱るような声が、門の中から聞えた。
伊織も、声いっぱい、
「わたくしは、宮本武蔵の門人でございます。