Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
「驚きました……」
と、耕介はさも驚いたふうを示して、
「知らずにお救けしたのでございますが、ここへ連れて来てみると、わたくしのお出入り先で、わたくしの最も尊敬している甲州流の軍学者、小幡先生の御門人ではございませんか」
「ホ。この人が」
「はい。北条新蔵と仰有いまして、北条安房守の御子息――兵学を御修行なさるために、小幡先生のお手許に、長年お仕えをしているお方でございます」
「ふーム」
武蔵は、新蔵の首に巻いてある白い布をそっとめくってみた。今焼酎で洗ったばかりの傷口は赤貝の肉片ほど、見事に刀で抉り飛ばされていた。灯影は凹んだ傷口の底まで届き、淡紅色の頸動脈はありありと眼に見えるほど、露出していた。
髪一すじ――とよくいうが――この負傷の生命は、正に髪一すじの差で取りとめていた。それにしても、この凄い――冴え切った太刀の使い手は、いったい何者だろうか。
傷口に依って考えると、この太刀は、下からしゃくり上げて、しかも燕尾に刎ね返したものらしい。さもなければこう鮮やかに、頸動脈を狙って、貝の肉を削ぐように抉れている筈はない。
――燕斬り!
ふと、武蔵は、佐々木小次郎が得意とする太刀の手を思いうかべ、とたんに先刻の、主の耕介が自分の室の外から、その訪れを告げた声を――今になってハッと思いあわせたのであった。