Classiques japonais avec furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lisez 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 257 350 caractères · 507 écrans
辻川のみち
辻川のみち
私の家は辻川の村を貫いている道に面していた。この道は昔からさまざまの人が通っている。ことに鳥取と京都の間を通う際に、とくに途中で大阪を訪う必要があったとすれば、この街道が近道として選ばれたのであった。日記を残した人は少ないが、今後も記録を注意しておれば、相当にこの道を通った人が発見されることであろう。私の記憶に残る古人に、江戸時代の国学者で小説家の上田秋成がある。彼の紀行文の中には辻川を通ったことなども記してあり、懐しさをそそるのであるが、もう一人羽倉外記という幕末の学者が、大阪にいたころの旅中、辻川を通った旅行記がある。この人は私の尊敬する学者の一人で、伊豆七島の経営を研究するため自ら赴いて島の代官となり、つぶさに同地を研究して、島民の生活に同情を寄せた、傑出した学者である。この人をはじめて知ったのは、十三歳で茨城県布川に移ってから二年目のことである。布川の借家に離れがあって、私らの遊び場などに使っていた。そこの戸棚に多くの写本類があり、私より二年遅れて同地に移った父が、その蔵書の中から羽倉氏の著書を発見したが、その中に辻川に触れた旅行記があったため、じつに懐しく、この羽倉氏が、私の心に刻みつけられたのである。