Classiques japonais avec furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lisez 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 188 242 caractères · 380 écrans
「可哀そうに死んだであろう」
呟いたとたんに谿底から歌唄う声が聞こえて来た。
「……鳥はいぬかや大鳥は……」
「や?」と武士は眼を見張った。「きゃつ怪我さえしなかったと見える」
「……ハアほいのホイ……」
歌声はだんだん遠ざかる。
「むう、まるで猿のような奴だ」
「いざ鳥刺が参って候……」
もう遠くへ行ったらしい。よく歌声が聞き取れない。
しばらく武士は唖然として熔岩の上に立っていたが、ふと気が付いて握っていた刀を腰の鞘へ納めようとした。と刀身に顔が写った。で、じッと見入ったものである。
「いかさま凄い顔である」呻くがように武士は云った。「これでは人も恐れる筈だ。むう、我ながら浅ましい」
ピタリと刀を鞘に納めると、憮然として佇んだが、「人穴へ行こう! 人穴へ行こう! そうしてそこで……顔の手入れをしよう」
岩を下って歩き出す。今までの精気は跡形もなく、顔の血の気は名残りなく消え、足の運びさえ弛気である。据わった瞳を当てなしに注ぎ、右へよろめき、左へよろめき、西に向かって歩くのである。
今日の里数をもってすれば、本栖村から人穴村まではおよそ三里十町もあろうか、村には戸数三十戸あまり、富士登山の道もあり、夏は相当賑わうらしく、旅舎が二軒立っている。