Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate
階下のお方へおもどしして来い」
「ううん、階下で返すといったら、こんどは、あのおばさんの方から、そんなに欲しければ上げる、その代りに大事に持ってくれますかというから、きっと大事に持っていると約束して、ほんとに貰ったんだ」
「困った奴」
この家にとり、大事そうな仮面やら小袖まで、こうして理由なく貰って立つことが、武蔵は何となく気がすまない。
何か気持だけでも礼をのこしてゆきたいと思う。しかし金銭には困らない家らしいし、代りに与える品とても持っていないので、階下へ降りて、改めて、城太郎のぶしつけな強請みを詫びて、それを戻させようとすると、若い後家は、
「いえ、考え直してみますと、あの仮面は、却って私の家にないほうが、私の気が楽々するかも知れません。それに、あのように欲しがるものゆえ、どうぞ叱らないでくださいませ」
そういう言葉を聞けば、よけいにあの仮面には何か歴史のある物らしく思われるので、武蔵はなお固辞したが、城太郎はもう大得意の態で、草鞋を穿いて、先に門の外へ出て待ちかまえている。
仮面よりも、若い後家は、武蔵に対してほのかに名残りを惜しみながら、この奈良へ来た時は、ぜひまた幾日でも泊ってもらいたいと繰返していう。