Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate
二
――やがて日が暮れると、先祖の位牌に、燈明をともして、何か念じるように、その下に坐っていた。
夕飯もたべずに、家の者は皆、出払っていた、夜になっても、その人々からの吉報はなかなか聞かれなかった。お杉はまた、暗い門口へ出て、立ちとおしていた。
水っぽい月が、邸のまわりの樫の梢にあった、後ろの山も、前の山も白い霧につつまれ、梨畑の花から甘い香がただよってくる。
その梨畑の畦から、誰か歩いてくる影が見えた、息子の許嫁であると分ると、お杉は手をあげた。
「……お通かよ?」
「おばば様」
お通は、濡れ草履の音を重そうに、走り寄ってきた。
二
「お通。――おぬし、武蔵のすがたを見たそうだが、ほんとけ?」
「え。たしかに武蔵さんなんです、七宝寺の花祭りに見えました」
「又八は、見えなんだかよ」
「それを訊こうと思って、急いで呼ぶと、なぜか、隠れてしまったんです。もとから武蔵さんていう人は、変っている人ですが、なんで、私が呼ぶのに逃げてしまったのかわかりません」
「逃げた? ……」
お杉は、首をかしげた。
わが子の又八を、戦へ誘惑したものは、新免家の武蔵であるといって、常々、恨んでいたこの老母は、何か、邪推でもまわしているらしく考えこんでいた。