Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate

Aozora Bunko

八

草むらから鹿のように起って、ぱっと彼方へ駈け出そうとする。

沢庵は、予期しなかったお通のさけびに、折角静かに網へ掬いかけていた魚を汀から逃がしたように、これも、あっと慌てて、

「――武蔵?」

と、満身の力で呼んだ。

「待たッしゃれ!」

つづいて投げた言葉にも、圧するような力があった。声圧というか、声縛というか、そのまま振りほどいて行かれない力がある。武蔵は、足に釘を打たれたように振り向いた。

「? ……」

らんらんと光る眼が、じっと、沢庵の影とお通のほうを見ていた。猜疑にみち、殺気にみち、殺気に燃えている眼である。

「…………」

沢庵はそれっきり黙っていた、胸の両の腕を静かに拱む、そして、武蔵が睨んでいる限り彼も相手を見つめているのだ、――息の数まで同じように合せて呼吸しているように。

そのうちに、沢庵の眼のまわりに、何ともいえない親しみぶかい皺が和やかに寄ると、拱んでいた腕を解いて、

「お出でよ」

と、彼から手招きした。

すると武蔵は、途端に眼ばたきをして、異様な表情をその真っ黒な顔にあらわした。

「ここへ来ぬか。――来て、一緒に遊ばぬか」

「? ……」

「酒もあるぞ、食べ物もあるぞ、わしらはおぬしの敵でも仇でもない。