Classici giapponesi con furigana
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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Leggi 三国志(三) (さんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 312.452 caratteri · 628 schermate
その日の戦に。
曹操麾下の夏侯惇は、呂布の大将高順と名乗りあって、五十余合戦ったが、そのうち高順が逃げだしたので、
「きたなし、返せ返せ」と、呼ばわりながらあくまで追い馳けまわして行った。
すると、高順の味方曹性が、「すわ、高順の危急」と見たので、馬上、弓をつがえて、近々と走り寄り、夏侯惇の面をねらって、ひょうと射た。
矢は、夏侯惇の左の眼に突き刺さった。彼の半面は鮮血に染み、思わず、
「あッ」
と、鞍の上でのけ反ったが、鐙に確と踏みこたえて、片手でわが眼に立っている矢を引き抜いたので、鏃と共に眼球も出てしまった。
夏侯惇は、どろどろな眼の球のからみついている鏃を面上高くかざしながら、
「これは父の精、母の血液。どこも捨てる場所がない。――あら、もったいなや」
と、大音で独り言をいったと思うと、鏃を口に入れて、自分の眼の球を喰べてしまった。
そして、真っ赤な口を、くわっと開いて、片眼に曹性のすがたを睨み、
「貴様かッ」
と、馬を向け跳びかかってくるや否、ただ一槍の下に、片眼の讐を突き殺してしまった。
七
おそらく天下第一の健啖家は、夏侯惇であろう。
――後には、人々の話題をにぎわし、夏侯惇もよく笑いばなしに語ったが、わが眼を喰って血戦したその場合の彼の心は、悲壮とも壮絶ともいいようはない。