Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate

Aozora Bunko

……俺もこの辺を、駈け廻ったはずだが、何の記憶えもない」

「見ろ、そこらを」

武蔵は、指さした。

野分に伏した草むらや、白い流れや、眼をやる所に、おとといの戦で斃れた敵味方の屍が、まだ一個も片づけられずにある。萱の中へ首を突っ込んでいるのや、仰向けに背中を小川に浸しているのや、馬と重なり合っているのや、二日間の雨にたたかれて血こそ洗われているが、月光の下に、どの皮膚も、死魚のように色が変じていて、その日の激戦ぶりを偲ばせるに余りがあった。

「……虫が、啼いてら」

武蔵の肩で、又八は病人らしい大きな息をついた、泣いているのは、鈴虫や、松虫だけではなかった、又八の眼からも白いすじが流れていた。

「武やん、俺が死んだら、七宝寺のお通を、おぬしが、生涯持ってやってくれるか」

「ばかな。……何を思い出して、急にそんなことを」

「俺は、死ぬかもわからない」

「気の弱いことをいう。――そんな気もちで、どうする」

「おふくろの身は、親類の者が見るだろう。だが、お通は独りぼっちだ。あれやあ、嬰児のころ、寺へ泊った旅の侍が、置いてき放しにした捨子じゃといった、可哀そうな女よ、武やん、ほんとに、俺が死んだら、頼むぞ」