Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate
「お馬鹿ちゃんだよ、お前さんは、何をメソメソしているのだえ」
夕化粧をしながら、後家のお甲は、叱っていた、そして、炉ばたにいた武蔵を、鏡の中から、睨みつけた。
武蔵はふと、前の晩の、枕元へ迫った後家のささやきと、甘酸い髪の香をおもいだして、横を向いた。
横には、又八がいた、酒の壺を棚から取って、自分の家の物のように勝手に酒瓶へうつしているのだ、今夜はお別れだから大いに飲もうというのである、後家の白粉は、いつもより念入りだった。
「あるったけ飲んでしまおうよ。縁の下に残して行ったってつまらない」
酒壺を三つも倒した。
お甲は、又八にもたれかかって、武蔵が顔をそむけるような悪ふざけをして見せた。
「あたし……もう歩けない」
又八に甘えて、寝所まで、肩を借りて行く程だった。そして、面あてのように、
「武さんは、そこいらで、一人でお寝。――一人が好きなんだから」
と、いった。
いわれた通り武蔵はそこで横になってしまった。ひどく酔っていたし、夜もおそかったし、眼がさめたのは、もう、翌日の陽がカンカンあたっている頃だった。
――起き出て、彼がすぐ気づいたことは、家の中が、がらんとしていることだった。