Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate
――吹くと涙がこぼれるから。
お通が、貸すのも嫌、吹くのも嫌といった気持は、よくわかるし、可憐しい。
「…………」
沢庵は、黙ってしまった。
めずらしく三日目の今夜は、薄雲の裡に、ぼやっと、真珠色の月が溶けている。秋に来て春に帰る雁が、こよいも日本を去ってゆくとみえ、雲間に時々啼き声を捨てている。
「……また、火が乏しくなったな。お通さん、そこの枯れ木をくべておくれ。……おや。……どうしたのじゃ」
「…………」
「泣いているのか」
「…………」
「つまらぬことを思い出させて、心ないわざをしたの」
「……いいえ。沢庵さん……わたしこそ、強情を張って悪うございました。どうぞ、おつかい下さいまし」
帯の間の笛を抜いて、沢庵の手へ差出した。
それは、色褪せた古金襴の袋に入っている。糸はつづれ、紐も千断れているが、古雅なにおいと共に、中の笛までが、ゆかしく偲ばれる。
「ほ。……よいのか」
「かまいません」
「じゃあ、ついでのことに、お通さんが吹いてはどうじゃな。わしは、聴いていてもよいのだ。……こうして聴いているから」
笛には手を触れないで、沢庵は横向きになった。そして自分の膝を抱えこむ。