Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate
じっと眼をとじて、聞き惚れているうちに、沢庵は、昔三位博雅卿が、朱雀門の月の夜に、笛をふいて歩いていたところ、楼門の上で同じように笛を合調す者があったので、話しかけて笛を取りかえ、夜もすがら二人して興に乗じて吹き明かしたが後で聞けばそれは鬼の化身であったという、名笛の伝説を思い出さずにいられなかった。
鬼ですら音楽にはうごかされるという。まして、この佳人の横笛に、五情にもろい人間の子が、感動しないでおられようか。
沢庵は信じた。また、泣きたくなった。
涙こそこぼさないが、彼の顔は膝の間へだんだんに埋まっていた。その膝を、われともなく固く抱きしめていた。
焚火の火は、トロトロと、二人のあいだに燃え衰えて来たが、お通の頬は反対に紅くなった。自分のふく音に三昧となって、彼女が笛か、笛が彼女かわからない。
母は何処? 父は何処? とその音は宙を翔けて、生みの親を呼んでいるかのようであった。また――自分を捨てて他国にいる無情な男に、かくも、裏切られた処女ごころは痛み傷ついていることを、纏綿と恨んでいるようである。
なお、なおさらのこと。
この先――この傷手を持った十七の処女は――親も身寄りもない孤児は――どうして生き、どうして人なみな女の生きがいを、夢みて行かれるだろうか。