Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate

Aozora Bunko

「やめたくなった……」

川を見る。

三条小橋の下で、女が布を晒していた。橋の上を、騎馬の人が通ってゆく。清十郎は、道場の稽古を想い出した。木太刀の音や槍の柄のひびきが耳についてくる。大勢の弟子が、きょうは自分のすがたが見えないのを何といっているだろう。弟の伝七郎もまた舌うちしているに違いない。

「藤次、帰ろうか」

「今になって、左様なことを仰っしゃっては」

「でも……」

「お甲と朱実をあんなに欣しがらせておいて、怒りますぞ。早くせいと、急がせて参りましょう」

藤次は出て行った。

鏡や衣裳の散らかっている部屋をのぞいて、

「あれ? 何処じゃろ」

次の部屋――そこにもいない。

布団綿のにおいが陰気に閉まっている陽あたりの悪い一間がある。何気なく、そこも、がらりと開けていた。

いきなり藤次はその顔へ、

「誰だッ」と、怒鳴られて面食らった。

思わずひと足退いて、うす暗い――表の客座敷とは較べものにならない湿々した古畳のうえを見た。やくざな性を遺憾なく身装にあらわした二十二、三歳の牢人者(註・牢ハ淋シムノ意、牢愁ナドノ語アリ。当時ノ古書ミナ牢人ノ文字ヲ用ウレド、後ノ浪人ト同意味ナリ)――が、大刀のつばを腹の上に飛び出させたまま、大の字なりに寝ころんで、汚い足の裏をこっちに向けているのである。