Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate
――しかしそれは心がまえだけで、ほんとに今年の冬までしかない生命であるとしたら、彼の精神は、決して穏かでいられなかった。
(したいことがたくさんある! 兵法の修行もそうだが、人間としてやりたいことを、おれはまだ何もやっていない)
卜伝や上泉伊勢守のように、一度は多くの従者に鷹をすえさせ、駒をひかせて、天下の往来も歩いて見たい。
また、恥かしくない門戸のうちに、よき妻をもち、郎党や家の子を養って、自分には幼少から恵まれないところの家庭というものの温かさのうちに、よい主人ともなってみたい。
いや。
そういう人生の型に入る前には、ひそと、世の女性にも触れてみたいのだ。――今日までは明けても暮れても、念々兵法のほかに頭が外れないので、不自然なく童貞をたもって来ているが、このごろ時折、往来を歩いていても、京都や奈良の女性がはっと美しく眼に――というよりは肉感にひびいて来る時がある。
そんな時、彼はいつも、
(お通)
をふと思い出すのであった。
遠い過去の人であるような気がしながら、実は常に近くむすばれているような気のするお通。
――武蔵はただ漠然と、彼女を考えることだけで、時にはさびしい孤独と流浪を、どれ程、自分でも無意識の間に、慰められているか知れないのであった。