Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate

Aozora Bunko

「……なぜ一言でも」

胡桃の葉はふるえていた。樹にものをいえば樹さえ感動するかのように。

「……あんまりです……」

怨めば怨むほどもの狂わしく恋しいのだ。宿命といおうか。どうしても、その人との生命の合致を見なければ、ほんとの人生を呼吸することのできない生命を持っていることは、弱々しい精神には耐えないほどな苦しみに違いなかった。片肺の肉体を持っている以上な苦しみだった。

「……あ、坊さんが来る」

半狂人のように怒っていた城太郎がそう呟いたが、お通は胡桃の木から顔を離そうとしなかった。

伊賀の山々には、初夏が来ている。真昼になるほど空は透明性と紺碧を深くしてきた。

――旅の坊さんは、その山をひょこひょこ降りて来た。白雲の中から生れて来たように、世の中の絆を何も持っていない姿である。

ふと、胡桃の木の彼方を通りかけて、そこにいるお通のすがたを振り向いた。

「おや? ……」

その声に、お通も顔をあげた。泣き腫らした眼は、びっくりして大きくさけんだ。

「あっ……沢庵さん」

折も折である。宗彭沢庵のすがたは、彼女にとって、大きな光明だった。それだけに、こんなところへ沢庵が通るなんて、余りに偶然な気がして、お通は、白昼夢にさまよっているような気持がしてならなかった。