Classici giapponesi con furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Leggi 胡堂百話 (こどうひゃくわ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 124.386 caratteri · 248 schermate
旅さまざま
と題をつけたのは私である。
旅さまざま
旅は、きらいでない。健康さえ許せば、今でもやりたい。
昔の人は、旅を、おっくうがったように思うが、案外そうではなかったらしい。私の生家でも、古くから、道中差しはタンスの中に用意してあり、小型のツヅラと矢立て。佐倉宗五郎の着るような雪合羽。それに道中の費用として、小粒や小判の一、二枚は、いつでも仕舞ってあったはずである。その小判は、私にまきあげられるのを心配してか、母は、とうとう見せてくれなかったが、私の弟は、たしかに見ている。
これだけの用意があると、不意に伊勢参宮にさそわれても、恥をかかずに済むわけで、私の父なども可なり出かけたようである。
広重の絵を見ると、赤や緑の鮮かな合羽姿が描かれている。実際、昔の武士の旅合羽は美しいもので、目のさめるようなエメラルド・グリーンの実物を見て、なるほど広重はウソを描かないと感心したことがある。地質は呉絽という毛織で、明治になっては風呂のアカ摺りに、名残りをとどめた。
だが、私の子供ごころの思い出は、そうした武士の姿でなくて、ものかなしいラッパを鳴らす郵便馬車から始まる。