Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こどうひゃくわ

胡堂百話

野村 胡堂

Leggi 胡堂百話 (こどうひゃくわ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 124.386 caratteri · 248 schermate

Aozora Bunko

家達公は、東京では、なかなか逢わなかったけれど、別荘へ行けば、案外、のんきで、気さくな将軍様だった。

逗子駅から葉山へ抜ける左手の、あれは何という山だろうか。見上げるばかりの崖の上である。私は、最初に行った時、崖下の門の前で人力車を降り、あえぎ、あえぎ、登って行った。肥った十六代様が、これを登るのは大変だろうと思ったが、あとで聞けば何のことだ。別に裏山づたいの搦手があって、これならば、車が玄関まで行ける。

七里ガ浜や江の島が、一目に見える日本間で、ぴたりと坐った十六代様は、両手を角帯のところへ内八文字に揃えたまま、

「ええ。夏場所も済みましたし、東京は何かとうるさいので……」

と、のんびりといった。

公爵、衆族院議長というよりも、国技館の定連として有名で、たまに姿が見えないと「徳川関休場」などと、雑観記事の見出しになった。

「公爵は、ヒイキ力士がありませんね」

何十年も見ているくせに、誰がヒイキというのは聞いたことがない。あんなことで、何がおもしろいのかと、きいてみたら、

「そう見えますか?」

とたんに、歯切れのいい反問だ。

「は?」

「私といえども人間です。