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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
「無理とは知ったが、いつも駕籠の迎え、馬の送りで、いと重々しゅう扱っておるから、稀には風流の交わりらしく、苦労して集まるのも、一だんと好かろうかと存じて、場所も此処、時も不意に、誘うたのじゃ。……しかしさすがは里村紹巴、仮病を装うてのがれもせず、嵯峨口からでも五十余町もある山を、あたふたと登って参ったところは、似而非風流ではない。わが友とするに足る漢だ」
行祐、宥源の二僧を先に、東六右衛門やその他の従者をしりえに、光秀もまた高い石段を上っていた。そして少し平地を歩むかと思うとまた次の高い石段があった。
上るに従って、杉や檜の青い闇が深まってゆくのと、夏の日の空が桔梗色にたそがれてくるのと重なって、忽ち夜に近い心地がしてきた。そして一歩一歩、山上の冷気は、麓とは甚だしい差のあることを肌に思わせてくるのでもあった。
「つい、失念しておりましたが、紹巴どのからお詫びおきして賜われと、お言伝てを聞いていました。途中までお迎えに伺うべきですが、きょうの御登山は、おそらく御祈願事第一と存じますゆえ、山廟へのお詣りがおすみ遊ばした頃、ごあいさつに伺いますからと――」