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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
饗宴
佐柿弥右衛門もやがて退った。
秀吉はひとり燭に対していた。こよい弥右衛門に託して安土へ急がせた書簡は、急遽、信長自身の来援をこの地に仰ぐためのものだった。
孤城高松の運命は、もう網の中の魚に似ている。
それを救うべく、毛利輝元、小早川隆景、吉川元春の総将から全軍も、挙げてこれへ会同している。
時なる哉。中国の覇業は今、この一挙に完成しよう。秀吉は、この壮観を、信長にも見せたいと希った。また、この重大なる勝敗のわかれを、決定的に確保するためにも、信長の出馬を仰ぐことが万全と信じたのであった。
饗宴
――一転、眼を移して、安土の府のきょうこの頃を眺めるならば。
ここの城市の景観と、中国の戦陣とは、一脈の繋がりもない別天地かと、疑われるほどな相違がある。
香りの高い新鮮な文化。
それに相応しく華麗豪放な往来人の姿。燦爛たる大天守の金碧を繍いつづる青葉若葉、――ここでは中国に見られたあの泥土の闘いも人の汗も、遠いものにしか考えられない。
五月十五日から、十六、十七、十八、十九日の頃といえば、まさに高松城を孤立化するために、あの大築堤を前提とする水攻めの計が実行にうつされて、秀吉以下、黒田官兵衛その他不眠不休に、その工を督していたあいだである。