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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
鼓譟
それを戦機として、水色桔梗の九本旗は、三旗ずつ三部隊にわかれ、七条口を突破して、中町の木戸木戸を踏みやぶり、いちどに洛内へ混み入った。
鼓譟
時をあわせて、五条の木戸、四条三条筋の木戸木戸へも、明智軍は駈け分れて殺到した。
まだ霧こそ深いが、東山のうえは紅々と黎明に染められている頃なので、往来人のために、常のごとく木戸の潜りは開かれていた。
その潜りからどうと、馬も人も、槍も鉄砲も、押し合って混み入ろうとした。旗竿は寝かして通った。この混雑をながめた部将は、
「押すな、慌てるな。後の隊はしばらく潜りの外に待て」
と、一応、むりに抑えて、大扉のかんぬきを抜き、八文字に開け放してから、
「それ、通れ」
と、大声で励ました。
本能寺の濠に迫るまでは、枚を銜んで、喊声を発すな、旗竿も伏せてゆけ、馬も嘶かすな――と軍令されていたが、ひとたび木戸を突破して、町なかへ駈け入るや否、明智の部下はすでに、半ば狂乱の状態をあらわしていた。
前の方で、わあっと、吾れもなきかのような声があがると、駈けつづく中ほどでも、わあっと叫び、後の方でも、わあっと呼応した。
その喊声のつむじは、何とも名状しがたい卒伍の感情をふくんでいた。