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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

推参

板戸を深く射抜いた矢は、そのするどい鏃の光をすでに何本も植えて、屋内の者へ戦いを宣していた。

推参

六角の南、錦小路の北、洞院の西、油小路の東、本能寺の四面両門はもう明智勢の甲冑と、先途を争う寄せ声で埋まっていた。

が、濠を前にしているので、一見難なく見えるそこの築土へも、たやすくは取り付かれなかった。槍、旗竿、鉄砲、長柄などの林が犇めき動いているに過ぎなかった。

「なんの」

「われこそ」

と、無碍に逸って、その中から築土の根がたへ跳んだ者も、跳び損ねた者も、例外なく濠の中へ落ち込んでしまった。具足の重みもあるため、そこへ落ちたがさいご、腰の辺まで異臭を持つおはぐろのような泥土の沼に埋められ、あがいても叫んでも、戦友すら顧みてくれないのである。

錦小路側の一部隊は、すぐ附近の貧民窟の民家をぶちこわしにかかっていた。潰された家の下から嬰ン坊を抱いた女や老人や子どもらが、貝殻の中から逃げるやどかりみたいに逃げ散った。またたく間に、明智勢は柱を運んで濠へ渡し、戸板や屋根をもって濠を埋めた。

どっと、われがちに築土へたかる。鉄砲組は銃をそろえて、その上から内部の伽藍へ向って、第一弾を撃ちこんだ。