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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

わくら葉

わくら葉

光秀が眠りについた後、やがて左馬介が退がって来ることを予期して、その姿を待ちうけたように、一室の杉戸の端近く座をしめていた天野源右衛門、藤田伝五、四方田政孝の三名が、

「あ。もし……」

と、呼びとめて、ひとしく手をつかえ、

「恐れ入りますが、しばしそれがしどもへ、お顔を拝借ねがわれますまいか。折り入っての儀で」

と、常にない容子でいった。

むしろそれは、左馬介のほうでこそ、待っていたことのごとく、

「おそろいで、茶室のほうへ渡られぬか。殿にはお寝みになられたので、釜の火がむだになるかと思うていたところだった。如何であるな」

「お茶室なれば、人を遠ざける要もなく、至極結構でございますが」

「では、ご案内しよう」

「というても、われら武骨者ぞろい、茶は弁えもいたしませぬし、また今日は、そうしたお心入れをいただく程、心にゆとりも持ちませぬが」

「さもおざろう。各※(二の字点、1-2-22)の胸底もいささか左馬介とてお察しはしておる。さればこそ、語るには、茶室がよいのではあるまいか。お気づかいなく――」

左馬介は導いてゆく。

人々は後についた。そして狭い壁と障子明りの中に坐り合った。