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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
武人宗治
(おかしくもないことをするものだ)
と、相手にもならずに、この構えのまま、さっきからただ忠実に君命のみを守っていたものと思われる。眼だけをうごかして、秀吉のすがたを仰ぐと、救われたように、吐息をついた。
「大儀大儀」
秀吉は笑って彼の任を解いた。そして、もうよいから、すぐ支度して、市松とともに、高松城へゆく使者に従いてゆけと命じた。
「ありがとう存じます」
籠から放される鳥のように、出ないうちから羽搏きをした。秀吉はなお懇ろにこう喩した。
「敵の中へ使いに行くということは大事なものであるぞ。その方たちが笑われるようなこといたすと、秀吉も敵に笑われるのであるぞ。さりとて、今見たように、鯱こ張ってのみおると、あれは小胆者ぞと敵に肚を押し測られるぞ。途々も、木戸の要害、兵糧の運輸、地についておる車の輪の痕から、城中に入ってはなおさらのこと、将士の眼ざし、防塁の備え、草木のたたずまいに至るまで、よくよく眼をとどかせて来ねばならん。その方たちをつかわすのは勉強のために遣るのであるぞ。よいか、心して行って参れよ」
武人宗治
馬首を北方に向けて、城外数里の先へ出ると、満目の山野には、