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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
それへ宇喜多の兵一万を合わせ、総勢三万の装備は完くととのい、いよいよ備中へ進軍した。
「このたびの挙は、よほど慎重にお懸りとみえる」
秀吉の心を、たれもみなそう忖度した。
一里ゆくにも、偵察の結果を待ち、二里進むにも、偵察して進んだ。
甲州方面の迅速な戦果と、赫々たる大勝の報は、もう一卒まで聞いている。で、この慎重な行動を中には飽き足らなく思って、高松城や、その余の小城のごときは、この三万を以てすれば一撃の下に――などと逸り切る声もないではなかったが、
「なるほど」
実地の戦場にのぞみ、ふかく敵の布陣が分ってみると、いかにこんどの戦が重要であり、また必勝の地を占めるまででも難しいことがよく頷けた。
秀吉はまず、高松城の北方遠くにある一高地――龍王山に陣した。
ここから、真南に、高松の城を俯瞰す。
すると、敵の七城の位置と、主城の高松と、唇歯の関係をなしている地勢が一目にわかる。
のみならず、さらに遠く、芸州吉田の毛利の本国を中心とし、伯耆、備中、その余にわたる敵国のうごきを大観し、吉川元春の軍、小早川隆景の軍、毛利輝元の軍などが、これへ来援してくる場合の大勢をもあらかじめ察するに便であった。