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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

「神さま」

と、鯰たちの足もとへ額ずき、掌を合わせたままありがた涙にくれていた。

そのほか黒山のようになった人だかりからも、口々にばてれんの徳を称える声が揚った。自分たちの純朴をもって、単純にみな随喜した。

「よいでしたね。この子には、天主様のお守りがありました」

ばてれん達は折角これまで来たのにという悔いも惜しみも見せず、無駄になった献上の品々を抱えて、そのまま、後へ引っ返して行くのであった。彼らの碧い眼には、一箇の信長も、一箇の町の子も目的の対象としては、同じものに過ぎなかった。それがまた、この界隈の長屋から長屋へ話のたねになって、なお後々、どれほど大きな感激の波動になって行くかをも彼らはよく知っていた。

「――宗湛。見たろうが」

「いや、感心しました」

「怖いの。あの宗門は」

「怖い。ほんとに考えさせられますな」

顔見あわせて、こう嘆声を交わし合う声が聞えた。――その後の、ほかに人なき濠ばたにである。

ひとりは三十前後、ひとりはずっと年配をこえた老人だ。親子と見れば見えないこともない。堺町人の大物とも少し趣は異るが、どこか大まかな幅と教養の奥行きがその人柄に感じられる。