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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

地勢上、博多町人は、進取の気宇と、呑海の豪気に秀で、堺町人は経営の才と、文化性に富み、またこれを政治に結ぶことを忘れない特性をもっていた。

貿易家とも呼べようし、政商ともいえるであろうそれらの町人に対して、信長は表面茶遊をもって接しているが、戦国下の経済から文化政策、対外国の諸問題、たとえば対ばてれん策、或いは、将来の海外雄飛にわたる抱負までを、何くれとなく諮問していた。

信長の海外知識は、ほとんど、これらの人々から、茶をのむ間に、学び取ったものといっても、過言でないほどである。

いまも信長が、はなしに我を覚えなくなると、南蛮菓子へ手を出して、幾つでも食べる様子を見て、島井宗室が、

「それには、砂糖という物を用いてありますから、お寝みの前に、たくさんはおよしなさい」

と、注意すると、信長は、

「砂糖はどくか」

と、訊ね返した。

宗室はそれに答えて、

「どくにはなっても、薬にはなりますまいな。いったい蛮土の物は濃厚で、日本の物は淡味です。菓子でも、干柿や糯の甘味で、十分舌に足りていたものが、砂糖に馴れると、もうそれでは堪能しなくなります」

「九州にはもうだいぶ砂糖が渡って来ておるか」