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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
さらにそれへ、信長の遺子ひとりを守り加えるならば、以て外は光秀を圧し、内は旧織田軍を包括して、自然、次代の中心勢力を持つにいたるであろう。――たとえ、織田の遺臣中に二、三の野望家があらわれることを予期しておいても、さして思慮実力とも両全といえる程な人物は見あたらない。丹羽、柴田、滝川、羽柴――まずどれもこれも急には活動できまい。できたとしてもさしておそれるに足るほどな者はいない。
家康はそう観ていた。諸事、肚の底にそれを深く据えておいてのことばであり行動であるのだった。しかし扈従の面々には、やはり眼前の問題――この危地をどうして無難に三河まで切り抜けて通ろうか――のほうが、もちろん重大に苦慮されていた。それがまた、普通人の普通でもある場合だった。
「道を見に参った物見のものが帰りました、あちらへ控えさせておきましょうか」
小姓のひとりが、家康のそばへ来てたずねた。家康は、頷いてみせた。待たせておきますか、と小姓はもう一度念を押した。家康はかさねて頷いた。
そのとき石川数正が、ふと言葉をさし挟んだ。
「物見の者の報告を、さきに聞きとり遊ばしてはいかがですか。