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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
「そうか、あの時、そんなことを申したかなあ」
「子ども心に沁みたことは、妙にいつまでも、忘れないもので」
弥九郎は、ぽつんと、ことばを切って、黙った。
横道へ逸れた話を、後へ戻して、秀吉から質問をうけたことについて、答を胸の中で纒めているらしい。
やがてまた口を開いた。
「日幡の城の内情について、聞き及んでいる要点のみ申しあげます。ただし多くは人の風評、真偽は御賢慮をもってお判じ下さい」
「む、む」
「ひと口に申せば、日幡城の内輪は、うまく一致していないそうです。主将たる景親殿と、軍監の元祐殿と、いつも命令二途より出て、たがいに固執し、論議するといったような場合が多く、老職の竹井惣左衛門様も、ほとほと、困ったものと、てまえ如き者にまで、嘆息を見せられたことがありました」
「上原元祐の妻も、日幡の城内に住んでおると聞いておるが」
「あの奥方は、さすがに毛利元就様の血をうけ、御妾腹から出たお方ではありますが、賢夫人であると、評判のよいお人です」
「良人の元祐の人物は」
「これは、とるに足らないお人ではないかと思われます。自分の妻が元就公のむすめだということを鼻にかけて、何事につけても、格式ばかりやかましくいう。