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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

役所の建物自体も次々に接受されるのであった。布告の署名の違いくらいは住民たちには大して気にならなかった。重大なことは彼らが彼らの都合によって漁場を取りあげたり払い下げたりすることであった。その漁獲物の五分の一を現物租税として取りあげられることであった。

いまやそのためにこの倉庫も建てねばならぬのである。

役所は入札に附した。それは出来るだけ廉く、しかも責任ある仕事をさせることが出来た。むろん、街の請負師の間でそういう競争がなされることを予期していた。右と云えば左と出たい人間の気持に擁せられて、小さい街ながら、二人の有力者が目立っているのだ。なおその上にこの入札は、人民の自由を尊重する役所の公平な精神でもあった。われと思わんものは誰でも入札して宜かったのだ。設計に対する詳細妥当な見積り書によって、その審議によって役所側の諾否は決せられるのであったから。

だが、第三ばん目の競争者があらわれようとは誰が考えたろう――あの夜の阿賀妻らにはこのことだけが生命と取りかえるほど大切なことであった。仕様書をひっくりかえしたような見積りをつくり、理屈と佩刀にものを云わせたのだ。