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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

四

彼の気持も同じところで船足とともに凝結しているかと思われた。

住民は日頃の生活ぶりにかえっていた。闖入者たちとは同じ場所で、別な空気を吸っているのであった。

浜に陽炎がもえ立っていた。眼をしかめてそれを見ながら阿賀妻が云った。

「待っていることでございましょうな――」

「お手前、ちょっと」邦夷は云ったのだ、「漁夫の小舟を漕ぎだして、行って見てくれまいか」

彼の眼は沖の船にそそがれていた。甲板で人の動くのが見えた。

仮泊して月を越し、上旬も暮れかけていた。

四

――待っていた。

官便に托された書状が、シップの聚落に届けられたのだ。サッポロから、これもまた便にことづけてイシカリ役所にまわり、ある日その窓口にシップへの里程をたずねて来た行商人があった。

書状はそのものにあずけられた。

彼はその部落へ一日で往復出来るものか、と、それを確かめに役所に寄ったのだ。

「日和次第じゃ――」と役人は云った、「お前はどこの生れか?」

「越後でがアんすが」

「ふん、越後の生れならば、雪には馴れとるじゃろう、何の商いに行くのか」

「鋸でがんす、鋸、刃もの、――都合によっては鋸の目立ても教えたり」