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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
七
「それにしても、われらの主君を開拓使の貫属とはなにごとでござる」
「うん」
「玉目三郎を死におもむかせたとは申されぬ、高倉利吉どのに詰腹切らせてやったとは申されぬ――」
「それで?」
阿賀妻は冷たい眼でそう受け止めた。善意が悪意にとられるならば、その結論はたった一つだ。斬るか斬られるかだ。
「なんと」とその藩士は立ちあがった。
ふりかかった火の粉は払わねばならなかった。阿賀妻も腰をあげた。
しかし、彼らの仲間が押えたのだ。控えさせていた。ながい論議のうちに、目障りで堪らぬと思っていた阿賀妻に対する考えに、ひびがはいった。彼らは、お互いの気持がばらばらになっているのに気づいた。だから、いきり立っていた吉原兵太郎はのけぞるほどひき戻された。中途はんぱな白けた座になった。これは何事も解決していない。
七
あとあじの悪いものであった。
何ひとつ割りきれていないのに、割り切ろうとする情熱が消えてしまった。突然のことであった。ふいに彼らは真空のなかにおかれたようなうつろを感じた。ぼんやり虚脱されていた。
阿賀妻は何ということなしに立ちあがった。すると藩士らは彼の前にひとりでに途をひらくのであった。