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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

二

木挽き職人の一隊は山と作業場に別れた。一方は大野順平にひきいられて原始林にはいり、必要な材木を伐採した。他方はそれを挽材した。その間の運搬は、それは静かに流れる川水にまかさねばならなかった。「拙者が――」と名乗って出た大沼喜三郎が、習いおぼえた槍術を役立てようと云うのであった。川並人夫のあやつるところの長柄の鳶に、その手心は似ているにちがいない。筏にくめば顛動する危なかしさもないであろう。ゆらゆらと流されて河口に近づけば、下小屋の木挽きどもがとびだして来た。手をあげて――そのなかにはシャツ一枚の阿賀妻もいた――材料の安着を祝うのである。

大沼喜三郎を先頭とする数人の川並らは水をたたいてこれに応じた。逞ましい流水のみおや渦をくぐりぬけて、足にふまえた一括の木材を目的のところまで無事におくり届けた歓びであった。翌日彼らは、食糧をにない長い柄を肩にした。食肉鳥のように鋭く光ったトビ口が、陽にきらめいた。川岸づたいに、ヨシやアシや熊笹などを踏みつけて上って行った。もはやどう見ても、押しも押されもしない立派な流送人夫どもであった。歩幅にあまる溝はトビでささえて跳び越え、ぬかる湿地は流木をかき寄せて足場をつくった。