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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
七
少年はどぎまぎして、くゎッと熱くなるような喜びにふるえた。じきじき同輩のように話しかけてくれたのだ。
「馬がまいりました」
彼はそう云って戸をあけた。みんなは立上った。がやがやとそちらに向って歩きだした。
「それからご家老――」と高倉は阿賀妻の前にとびだした。もう何でも自由に口が利けそうであった。ちょっと、と、わきにひっぱって行って、彼ははっきり云うことが出来た。
「松岡さまが、お待ちしております、と」
「何かあったのか?」
七
たたき大工をもって任じてはいたものの、松岡長吉には棟梁の扱い方に自信が無かった。年期を入れたわけではない。大部分は見よう見真似で、それに、持って生れた器用さと自分の工夫が役立ったに過ぎない。それでも今の場合の彼らの家中に於ては、この建築の仕事のために進んで責任を持たなければならなかった。
景気よくはしゃいでは見せたが、心の中は陰気になるばかりであった。好きでもない冷たい酒を一ぱい猪口に受けて、いささか持てあましながら棟梁の三谷三次を眺めていた。暗くならないうちに、ほどよいところでこの座をうちあげねばならなかった。あれこれと、物のきまりを自分で指図して行かなければならぬのであった。