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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

四

「また!」と舌打ちした。

けろっとしている水面に向ってつンと手ばなをとばした一人の男は「おンや?――」と背のびした。

「いるんでねえか、ほら、あしこに――」

彼はその短かい顎の先で、遠い川向うの砂ッ原を示すのであった。白い砂に腰かけて、二人の男が小さく見えた。よく見ると、それはただの男ではなかった。街の男は何とはなしに硬くなって梁の上を見あげた。

餅撒きの阿賀妻は川に向って凝然としていた。彼の視線をたどって、丁度それが向う岸の男らにぶつかったとき、おもちゃのように小さい先方の人間が陣笠をふりだした。白たたきの表も光るし、金色の裏も輝いている。実は彼らには、どちらが表でどちらが裏かも判らないが、それは対岸の白い砂に点描されてきらりと動き、たしかに高貴に見えた。高貴な人の謙遜な意志をあらわしている――漁夫は漁夫なりにうなずいて眼をそらした。

伊達邦夷が陣笠を振っていたのである。そばに控えているもう一人のものは、それは云うまでもなくあの相田清祐であった。

四

彼は、立ちどまっては不可ない――と、音のない声で、しかも、声の限りに叫んでいる。そう阿賀妻は受け取った――さっさと続けてやってくれ、この景況をかいま見にやって来た自分らは、そッとこのままにして置くがよい。