轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

阿賀妻は職人たちに気づかれぬよう、棒立ちになって眺めていた。それと気が付いたときにはあッとくず折れそうであったに拘らず、それでもふみ耐えて、手近かな垂木をわし掴みにすることが出来たのだ。反射的に、ここで崩してはならぬと思うものが彼をしめつけていた。そして、支えが出来ると、彼は首をつっ立てた。却って傲慢に見えるであろう態度に立てなおして、遙かな川向うを一心に見つめた。

――あたりのものには、これという不審を起させないほどの短かい時間であった。その間に阿賀妻は、しびれるような激動をくぐり、それを抜けだしていた。彼は目の下の群集を見おろした。投げた餅はあちらの川に沈んでしまった。そぶりにざわめいたが、実は餅ははじめから無かった。――そう見て取ったようにぽかんとして、群集は次の方角に移りかけていた。阿賀妻は後を追うようにその隅に向った。けれども今は彼の手にある餅は遠くとばなかった。むしろ、故意のようにすぐ手前に落ちた。どっと人々がかけ集まって来た。そのなかに更にもう一つのを投げおとした。阿賀妻は混みあい奪いあう喧しい人々の姿がぽーッと消えるような気がした。