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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

顎で示すその方角には海があった。その海に船をまわして、こんなに一ぱい――とそう微笑んで、

「よろしいか、兵粮米を廻漕してまいりますぞ、兵粮米をはじめ、くさぐさの雑貨なども求めてまいりますぞ、よいか、よろしいか――」

旅装束の大沼喜三郎が前に出ていた。

「それでは大野どの――あとはよろしく」

これが第二分隊の出発であった。くるりと後向きになって、二人のものはとっとと小さくなって行った。黒い韮山笠のうるしがときどき艶光りして見えた。オダルの港に出かけて行くのだ。自然の巌壁を天のめぐんだ船澗にして、ようやく商業地の栄えを得つつあった港だ。帆船から汽船、木造から鉄づくりの巨船に――と、日ごとに外国型の海運に転じていた近海航路には、砂を吐きだし積みあげて、いよいよ遠浅になったイシカリ河口の船着き場は、役には立たないのだ。たかだかそれは、和船や底の浅い川崎船などの廻漕にのみ役立つ波止場になっていた。これらの古い昔の船々には、西蝦夷地のイシカリ港と喧伝されたこともあったのだが――その頃の目をもってすれば、後の従五位下の開拓判官松浦竹四郎にしても、その名著『西蝦夷日誌』