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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
と彼は彼らの歩いて来ただらだらな傾斜を下から見あげるのだ。
「刈って、刈り取って、どんどん積みかさねなさい、煙を絶えさせぬように濛々といぶすんじゃ、間もなく大野どの等も、小屋係りの衆ともどもここに見えられるじゃろう――身どもはその間、ちょいと川上の方を瀬ぶみしてまいる」
樹林はその渓谷を踏みしたがえてそびえ、見あげると、暗うつな色をたたえた木の葉は頭上になだれ落ちそうに繁茂している。群生した樹々は唯々、ひらけた空に向って、光を求めて争って伸びて行ったのだ。トド松は苔に喰い附かれ、蔦にからまれて立っていた。枝には紗をかぶったように苔が垂れ下り、サルオガセが灰色のかたまりとなってし噛みついていた。
それでも頑強なときわ葉で光線をさえぎり、それらトド松の間に散在する濶葉樹に対してたけだけしい勢いで対峙し、圧迫していた。較べると、アカダモのうすい葉は黄ばんではかなげな色に見え、ドロ柳の葉は心許ない白っぽさでめまぐるしいほど揺らめいていた。季節は彼らのところにいち早く訪れるのだ。蔦の葉には赤らみが殖え、白樺の葉はぺらぺらとしてもはや褐色に変りつつある。
「よろしいか」