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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

と関重之進は顔をあげた。

「どういう具合じゃな?」

先になったあちらの方は捗っているであろうかと訊ねるのである。

「シラッカリの沢には第一の小屋が出来かけています、今晩はあそこまでの予定らしく、小屋が出来れば下から路ならしをして来ますそうで――もっとも、測量係りだけは前に進みました」

「それで?――」と重之進は若いものを見つめて、「そなたは戻られるか?」

「次の用が控えていますので」

「では、な」

彼は脇差をぬき取った。肩脱ぎのうす衣に肩を一度は入れて、そしてするすると帯を解きほごした。武士のいでたちを脱ぎ捨てるのである。襯衣と腿引きだけの姿になった。脱いだ衣類に脇差を挾んだ。ぬッと突きつけて彼は云った。

「しばらく拙者は人足でござる、さればこの品々、身どもが妻女のもとまで届けておいて下さらぬか」

「はあ?」

「よいよい、これで身軽になりました、どうじゃ?」

そう問いかけられたものは、骨と皮の老体に目をつぶった。

「これで二倍に働けようぞ」

彼は掌に唾して鍬をふりかぶった。

下帯ひとつになったモッコかつぎが威勢よく往来した。

沢で燃す目あての煙はもくもくと立ちあがった。