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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

厳命を受けた彼らが後始末のために帰る途々考えたことは後の場合であった。この苛烈さは、宗家が新政権の前をつくろったに過ぎまい、不日、再び恩命に接するに相違あるまい――と。

ところが、恩命どころではなかったのだ。没収された領地には他藩のものが転封されてやって来た。天地の間、まさしく身を入れるに所も無くなった。急遽、わが身のふり方を定めねばならなかった。

狼狽していたかも知れない。

転封して来たものは再転封されてこの土地を去ったというのだ。扶持米取りの役付き家臣はなつかしい家屋敷を買いもどしたというのだ。采邑地持ちであったものは地券を受けてその同じ土地の地主になることが出来たというのだ。城は主が居なかったけれども、城下の街には昔ながらの人が住んで、その間何事も無かったように生活をつづけていた。どこかで古い制度に妥協しなければならなくなったわかい政権が、ひととき行きづまって、あれほど失望したこの家臣どもに身を置く余地をつくった。辛うじて、割りこむようにして得たものであったから、これはまことにありがたい措置であった。

しかもこのとき、他方では、彼らのあり方をごそッと根こそぎに覆した廃藩置県が成し遂げられていた。