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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

それを避けようとはしなかった。

「あけて下さい、ご家老――はて、一度お目もじの上、とくとこの篠崎彦助めからもお礼のお言葉をのべたいものと思いましたが、なかなか折を得ませんものじゃ、ところでご家老――これは年寄りのぐちじゃ、気にかけずに聞いて下され、ものの例えにも云う通り、烏の啼かぬ日はあっても子を思わぬ日はありませんじゃ――ようやっておりましょうか、あやつめらは?」

「ようやっております、――ご返盃」

「息災に暮しておりかしょうか」

「それはもう至極元気――」

「どうぞもう一つ、お受け下さい――そうですか、息災にしておりましたか、われらはもう老い先もありませんのでのう、ばばのやつめ、夢見が悪うてならぬが、何ぞ婿どのに変事でもあったじゃないかなんどとぬかしおりまして、の、年寄の取り越し苦労にやつれておりますわい、――さ、さ、まア、も一つ、ご家老は名だたる酒豪じゃ、――で、何でございましょうか、あやつめらは気楽にやっておりますでしょうか」

「――――」

「聞くと見るとは大ちがいと云うが、聞くことは何ひとつとして思わしくない蝦夷でござれば、見ればさこそと思われますのう」